「これがなくなったら私はどう生きていくべきなんでしょうね」と、笑いながら話している男性は、もう80歳を超えられているにも関わらず、のぼり職人として立派に働いておられる方でした。これは、以前テレビで放送されていたドキュメント番組に出演されていた方で、私はたまたまその放送を見ていました。日頃からあまりテレビを見ていない私でしたが、くるくるとチャンネルを回していたところ、この男性の言った一言に気を惹かれ、この番組を見ることにしたのです。その一言とは、「私はのぼりに生活を支えられている」といったものでした。私はこれを聞いたとき、のぼりというものがパッと頭に思い浮かばなかったのですが、この番組を見ている中でようやくそれがはっきりとしていきました。のぼりとは、お店の前に広告の代わりとして立てられている旗のようなもので、看板や電光掲示板と同じ役割を持っています。私は私生活の中で、お店の前にあるものというと、こういった看板や電光掲示板のイメージしかあらず、のぼりというものを思い浮かべることができませんでした。

この男性がおっしゃるには、まさにこの私たちの年代に対して、のぼりを活用するという考えがあらず、今後のぼりがなくなる時代になっていくのではないかと、心配されておられたのです。この男性は、のぼりを作り続けて30年以上も経っている方で、もしこののぼりが世間で必要とされない日がやってきてしまえば、それと同時に自分の仕事がなくなってしまうこととなり、もう生きていく術がないとおっしゃられていました。私はこれを見ている中で、確かにのぼりを立ててあるお店より、看板や電光掲示板を置いているお店が多いような気がして、この先のぼりがなくなっていく時代が来るという読みに納得することができました。この男性は今、毎日昔ながらのお客様から注文を受けるのぼりを製作されていて、それによって生計を立てているといいます。

しかし、もしそれでさえもなくなってしまったら、この男性はどう生きていかれるのでしょうか。生涯独り身で生きてこられたこの男性は、自分の最期までのぼりを作り続けていきたいと語られていて、その意思の強さはとてもかっこよかったです。私はこのドキュメント番組を見たことによって、これからの時代の流れ、仕事に意欲を持つことの大切さ、そしてその仕事に支えられている人がいらっしゃるということを知り、深い学びとなりました。